学校長ごあいさつ
出典: 京都学園中学高等学校
[編集] 学校長ごあいさつ
[編集] 建学の精神
本校の建学の精神は、世界的視野で主体的に考え、行動する人材の育成、つまり「世界の舞台に堂々と自分の意志で立ち、そして行動できる人を育てる」である。創立者の辻本光楠先生は、明治30年に15歳で単身アメリカ・サンフランシスコへ渡られた。当時、先生は学校で、欧米文化を取り入れた日本人が新大陸でアメリカ人と対等に渡り合っているとの話を聞かされていた。そこで自分の目で、日本人が新大陸で活躍をしている姿を見てみたいとお思いになり、ご両親の反対を押し切って渡米なさった。
早速、昼間はサンフランシスコ郊外のブドウ畑で働き、夜は英語学校へ行き勉学に励まれた。ところが現地での日本人の姿は、先生が想像をしていたような勇姿ではなかった。ブドウ畑で働く日本人はアメリカ人の前で、言葉が通じず、ただただおどおどとしながら、奴隷の如く何も言えずに働かされていた。その様子を見て、先生は大いに失望された。そこで、先生は、次の時代を担う日本の若者に、世界のどの舞台に立っても堂々と自分の意志で行動できる人になってもらいたい、という熱き思いで本学を創立され、今年86周年を迎えた。
[編集] 「この人と一緒に仕事がしたい」
1月末に本校卒業後15年ぶりに33歳になった一人の卒業生が母校を訪れた。名刺を手渡され拝見すると、アメリカの大手コンピュータ会社の人事担当者としてのポジションを任されている。彼は大学卒業後、アメリカ西海岸にわたりサンディエゴにある大学の大学院に進み、苦学を重ね、 MBAを取得した。そしてニューヨークの日系企業で勤めた後、現在の会社で大変充実しているそうである。彼に日々社会人としての心得について尋ねてみた。すると、すぐさま4つのことを話しはじめた。
一つめは高い目標を持つこと。二つめはポジティブマインドで行動すること。三つめは相手の立場に立って、相手を信頼すること。そして四つめに高い人間性を磨き続けることをあげた。
彼の言葉を紹介する。
「自分の会社がより発展するためには、常に高い目標を掲げそしてその目標を必ずクリアするぞ、というポジティブマインドをもつことです。失敗はあります。しかし、失敗を糧にして前進できる行動力が大切です。また、仕事は一人ですることはなく、常に仲間と共におこないます。そのときに、この人と仕事を一緒にしたいと思ってもらえる人であること。常に相手の立場にたって、相手を信頼して物事を進めていくことです。すべて楽しいことばかりではありません。しかし、どのような時も100%仕事に力を注ぎ込む、また決してあきらめない忍耐力が新たなよい方向へと仕事を導くことにつながるのです。日ごろより高い人間性を磨き続ける、自らの知性と教養、忍耐力や人を大切にするということを心掛けていると、仕事の厳しい場面に遭遇したときに不思議と高い人間性を持った同僚が現れ、より高いレベルの仕事に携わることができるのです。
仕事に励めば励むほど、人との出会いが増え、チャンスが生まれます。運は誰にでも目の前にあるものです。ただ、運をつかむ準備を常にしているか否かでつかめるものもかわります。私はすばらしい運をつかむことができました。この人と一緒に仕事がしたい、と思える人との出会いがあればこそ今の自分のポジションがあるのです。
振り返ると、学園高校の3年間、こつこつと学習に打ち込み、放課後になると一目散に北グランドに走って向かい、サッカーの全国大会出場を目指し、毎日毎日厳しい練習に打ち込みました。校門坂の数えきれないくらい繰り返したダッシュ。私の忍耐強さは部活動と勉強から身につきました。また、2年生のアメリカ研修では海外に出る経験も積めました。一生付き合える仲間にも恵まれた3年間、今から思えば、私にとって運をつかむ準備の期間であったとおもいます。」
笑顔で時折仕事の話になると鋭い目つきで話してくれた。
[編集] 新たな発見は人を動かす
私たちは、生徒の皆さんに本物を見せること・知らせることを念頭におき、授業に臨む。
4月20日5限に全クラスで「世界一大きな授業」(教育協力NGOネットワークJNNE主催文部科学省・外務省・国際協力機構後援)を行った。毎年同時期に世界で約1500万人の人々が、授業を通じて途上国の教育力向上について討議を重ねている。今年のテーマは「女の子と女性の教育」であった。生徒の皆さんと同世代の女性が家族の生活のために労働を余儀なくされている写真、また若くして結婚し子育てをしている写真などを見る。それぞれの国々の歴史的背景について耳を傾けながら、自分たちの生活との格差に愕然とする。同じ地球上で、日々当たり前と思っている生活が当たり前でないという現実を目の当たりにして、どのような行動を起こすべきなのかを考えた。
授業後数多くの感想が寄せられた。「学校で教育を受けられるありがたさ」「この現実を人々に伝え、どのような行動に移していくかが大切」「過去の歴史から何を知り、次の時代に何を残すのか」。新たな発見は人を動かす源になる。
また、全員が入学して1年後に迎える海外留学・海外研修で世界を経験する。建学の精神を具現化する旅、また一人の地球市民としての素養を育む旅である。ホストファミリーや交流校で新たな人と出会い、文化のちがいに苦悩する、また、逆境の地での生活を通して貴重な経験を体感する。
今から十数年前のこと、ホームステイを終えたある生徒が話した言葉を忘れることができない。「本当に家族の一人としてやさしく接してくださいました。先生、私は人に手を差し伸べられる優しい人になります」。人に手を差し伸べられる優しい人になる。人の心の温かさを感じられる人になる。貴重な経験は尊い言葉を生んだ。
[編集] 十年後の礎を築く学校
いま、世が求めている人とは、国境を越えたグローバルな知識を持ち、国と国を結びつけるような発想を持つ人と言われている。知力・体力の鍛錬、人を敬う姿勢、チャンスを生かせるか否か。常に自己進化が問われている。
自己進化とは、内外にかかわらず、まずチャンスを自ら進んでつかみにいくことから始まる。決してあきらめず、真摯に知識・教養の研鑽を続けること。その先には同じ高みを志としている人との出会いがあるはずだ。そして、その人たちとのチーム力によって築き上げた成果は想像以上の喜びをもたらしていく。それは、自らのチームだけにとどまることなく、社会の人々に喜びと勇気、そして誰にでも無限大の可能性があることを世に発信することになる。
本校の今年度のスローガンは「オアシスのある学校」。厳しい自然環境の中でそっと湧き出る泉。次の世界を担う生徒の皆さんに、湧き出る知的好奇心を喚起する学校作りを目指す。私たちは、生徒の皆さんが「今、何をすれば幸せになるのか」「今、何をしなければならないのか」を全力で考え行動に移すことに努める。学園生は、常に高みを目指し、その達成に向け決してあきらめず、可能性を信じ、無限大の自己進化を遂げ続けている。「いつかプロ!今、本気!」。私が学園生に言い続けている言葉である。限りある学生時代に、何事にもひたむきに挑戦し、貪欲に取り組むこと。その結果生まれる力は将来地球市民として地球で生きる喜びと自信を万民に与えるに違いない。
十年後、皆さんに京都学園に来てよかったと心から喜んでいただけるような学校作りに私たちはこれからも邁進する。
学校長 佐々井 宏平
